工場火災は一度発生すると、人命や設備に大きな損害を与えるだけでなく、操業停止による経済的ダメージや周辺地域への被害拡大など、多方面に深刻な影響を及ぼします。
本記事では、工場火災の主な原因や具体的な対策、BCPの重要性などを解説します。火災は決して他人事ではなく、いつどの現場でも起こりうるリスクの一つであることを認識する必要があります。
目次
工場火災は多種多様な業種で発生しており、その背後には機器の老朽化や作業手順の不備、火気管理の徹底不足などの要因が存在します。
また、原材料や保管物など取り扱うものの危険性が高い場合には、小さな火花でも大きな火災につながる可能性があるため、徹底した安全管理が求められます。
総務省消防庁のデータによると、2023年の工場や作業場での火災発生件数は1,905件で、2022年に比べると15.1％増加しています。また、都道府県別の工場・作業場における火災件数では大阪、愛知、埼玉の順で火災が多く発生しています。
（総務省消防庁 消防統計（火災統計）：https://www.fdma.go.jp/pressrelease/statistics/）
年間を通じて見ると、一部の業界では作業ピークの時期に火災件数が集中する傾向があり、これは生産量の増加や従業員不足による不注意が火災リスクを高める一因と考えられます。また、老朽化設備の問題が顕在化する大規模工場ほど、トラブル発生の確率が高まると言われています。
工場火災の主な原因
１． 溶接作業中の火花
２． 電気配線や機器の不具合
３． 可燃性ガスの誤取り扱い
４． 粉塵爆発
５． 放火や人為的過失
上位5つの要因はいずれも、作業環境のチェック体制や従業員不足と大きく関係している点が特徴です。
火災原因への理解を深めたうえで、具体的な予防策や管理方法を分野ごとに確認します。
工場火災の対策では、まず発火源となる工程や設備を把握し、適切な対策を確立することが重要です。特に危険物や可燃性の原材料を扱う工場では、保管場所や温度管理、換気設備など、より高い安全基準に基づく運用が求められます。
さらに、日常的な監視や点検を実施し、可能な限り事故の兆候を見逃さない姿勢が、火災リスクの最小化につながります。
溶接時の火花は極めて高温なため、周囲に可燃物があるとあっという間に引火してしまうリスクがあります。作業前には対象物や周辺の可燃材を十分に除去し、防火シートなどでカバーすることが基本です。
また、作業場所の近くに消火器や消火栓を常備し、火花が飛散しそうな方向を事前に把握したうえで立ち入り制限を行うことも大切です。
電気機器の老朽化や配線のショートは、工場火災の主要因の一つです。定期点検を徹底し、異常発熱が確認された機器や配線を早急に交換することは火災予防に直結します。
また、装置に適切なアースを取ることや、静電気対策として帯電防止用品を活用することで、思わぬ発火リスクを下げることが可能です。
可燃性ガスや危険物を扱う場合には、その性質や保管条件を理解し、適切にルールを設定する必要があります。温度管理や換気が不十分な環境では、ガス濃度の上昇に伴い、わずかな火種でも爆発が起こり得ます。
ガスボンベの取り扱いや充填設備の整備状況を定期的に点検し、マニュアルに基づいた作業を徹底することが、事故防止の重要なポイントです。
粉塵爆発は一瞬にして甚大な被害をもたらし得るため、多くの企業担当者にとって看過できません。定期的な清掃を行い、火花を生じる作業を行う際には安全管理を徹底し、必要に応じて防爆機器を使用します。
また、 空気の流れを良くすることが、粉塵の濃度を下げ、爆発リスクを軽減します。
工場火災には外部からの放火リスクや、従業員の不注意による過失も考えられます。そこで、施設や作業エリアの入退室を厳格化し、不要な人物が立ち入れない仕組みづくりが重要です。
さらに、従業員への定期的な防火教育や巡回監視を実施することで、不審な行動や異常を早期に発見・通報できる体制を整えることが求められます。
近年では、サーマルカメラの検知システムを導入して、温度変化や異常発熱をリアルタイムで監視する取り組みが増えています。これにより、火災が発生する前に危険箇所を特定し、いち早く対応を行うことが可能です。
早期発見につながる先進的なシステムは、特に設備が多岐にわたる大型工場や、夜間や休日の稼働が多い事業所で大きな効果を発揮します。
火災が企業や周辺地域に与える影響と、そのダメージを最小化し事業継続を可能とするBCPの概要を解説します。火災は設備の焼失や生産ラインの破損だけではなく、取引先や顧客との関係性を大きく損なうリスクをはらんでいます。周辺住民にも煙や粉塵による健康被害や、大規模避難が必要となるなどの影響が出る可能性があります。
そのため、あらかじめBCPを策定しておくことで、復旧とリカバリーの際に混乱を最小限に抑え、ビジネスを継続できる体制を築くことが不可欠です。
工場が一時的にでも生産を停止すれば、顧客離れや製品供給の混乱が発生し、企業ブランドや信頼を失う可能性は高まります。さらに、拡大した火災煙や化学物質が地域の環境へと波及するリスクも考慮しなければなりません。
こうしたリスクを抑えるためにも、ボヤの時点で検知し対応ができるような火災対策や、トラブル発生時の連絡体制や保険加入など、多角的な視点から対策を講じることが求められます。
BCPは、火災による操業停止からの復旧手順や、代替生産拠点の確保などを含めた計画を事前に整備する仕組みです。具体的には、非常時の対応マニュアルや指揮系統の明確化、必要物資の備蓄などが含まれ、定期的な防災訓練で実効性を検証します。
これらを徹底することで、万が一の火災発生時にも混乱を最小限に止め、迅速に操業を再開することが可能となります。
工場火災は、その原因を探るとヒューマンエラーやメンテナンスの不備など、未然に防ぐことが可能な要因によるものが多いのが特徴です。炎が燃え広がる前の時点で対応できるような対策を検討することで、事故リスクは大きく軽減できます。
さらに、火災発生時の初動対応やBCP策定を準備しておけば、生産停止や周辺被害の拡大を最小限にとどめ、企業の信頼を失わずに済む可能性が高まります。
三和コンピュータでは、サーマルカメラを活用した火災予防ソリューションを提供しています。サーマルカメラの特徴を生かし、物体の温度変化を捉えることで、火災につながりかねない温度の異常上昇を検知し、いち早い対処が可能となります。
デモ動画も掲載しておりますので、ぜひご覧ください。