
「Wi-Fiはアクセスポイントを増やせば速くなる?」オフィスネットワークでよくある誤解
オフィスには何台のWi-Fiアクセスポイントを設置していますか?その台数は適切なのでしょうか。「Wi-Fiが遅い」「もっとスピードを出したい」といった際に、まず検討されがちなのが「アクセスポイントを増やす」という対策です。
確かに機器を増やせば電波の届く範囲は広がりますし、改善できそうな気がします。しかし、実際には単純に台数を増やすだけでは速度や安定性が向上しないどころか、逆にトラブルを招くこともあるのをご存知でしょうか。
この記事ではオフィスWi-Fiでよくある誤解と、正しい改善のポイントを解説します。なぜ「増やすだけではダメなのか」、「どうすれば本当に速くなるのか」を具体的に紹介します。
なぜ「増やせば速くなる」と思ってしまうのか
Wi-Fiが遅いと感じる原因は何だと思いますか。多くの方が「電波が弱いからだ」と最初に考えるのではないでしょうか。家庭Wi-Fiでの経験から「機器を増やせば改善する」と思うのも自然です。しかし、オフィスWi-Fiは家庭用と違い、接続端末の数が多く、移動も頻繁で業務アプリも多様です。こうした環境では、単純な増設が逆効果になることがあります。
よくある失敗例
たとえばある企業では、会議室でWi-Fiが遅いという声を受け、アクセスポイントを2台から4台に増設しました。結果はどうなったでしょうか?一時的に電波強度は改善しましたが、同じチャネルを使うアクセスポイントが増えたことで電波干渉が発生し、Web会議はむしろ途切れやすくなりました。原因は「チャネル設計をせずに増やしたこと」。このように、増設は設計とセットで行わなければ逆効果になるのです。

Wi-Fiの速さは台数ではなく“設計”で決まる
Wi-Fiは分かりやすく例えると「目に見えない電波の道路」をみんなで共有する仕組みです。アクセスポイントを増やすと、同じ道路に車が増えるように“渋滞”が起きることがあります。特に2.4GHz帯は非重複チャネルが3つしかなく、干渉が起きやすい帯域です。5GHz帯はチャネル数が多く、DFSチャネルを使えばさらに選択肢が広がりますが、接続する端末がDFSに対応していない場合もあるため注意が必要です。
※DFSチャネル…Dynamic Frequency Selection(動的周波数選択)の略で、Wi-Fiの5GHz帯で利用される特定のチャネルを指す。DFSチャネルを使うと、利用できるチャネル数が増え、干渉が少なくなります。
チャネル幅の選び方
チャネル幅は広げるほど理論上の速度は上がりますが、同時利用者が多い環境では逆に効率が悪化するので注意が必要です。オフィスでは安定性を重視し、20MHzや40MHzで設計するケースが多いです。80MHzや160MHzは一見速そうですが、干渉リスクが高く、実効速度はむしろ低下することがあります。

電波の強さより“品質”が重要
「電波が強ければ速くなる」というのは誤解です。強い電波でもノイズが多ければ通信は遅くなります。重要なのは“きれいな電波”、つまり雑音とのバランス(SNR※)やチャネルの混み具合です。RSSI(受信信号強度)※が高くても、SNRが低ければ再送が増え、速度は落ちるため、Wi-Fi設計ではSNRの方が重要です。
さらに、エアタイム効率※も重要です。アクセスポイントを増やすと、エアタイムが分散されて逆に効率が悪くなることがあります。
※SNR…Signal-to-Noise Ratio(信号対雑音比) の略で、Wi-Fiや通信品質を評価する指標
※RSSI…Received Signal Strength Indicator(受信信号強度) の略で、Wi-Fiや無線通信で「どれくらい強い電波を受信しているか」を示す指標
※エアタイム効率…Wi-Fiネットワークで「電波を使える時間をどれだけ有効に活用できているか」を示す概念
増やしすぎるとローミングが不安定に
アクセスポイントを増やしすぎると、端末が「どこにつなぐべきか」迷ってしまいます。移動中に接続が切れやすくなったり、弱いアクセスポイントにしがみつく「スティッキー・クライアント」現象が起きることもあります。これを防ぐには、出力調整やローミング閾値の設定、バンドステアリングの活用が必要です。
実務での工夫
- 出力を下げてセルの重なりを適切に管理する
- 5GHzを優先し、2.4GHzはIoTや低速機器に限定する
- コントローラでローミングポリシーを統一する
無線以外の原因も見逃せない
Wi-Fiが遅い原因は、無線だけではありません。実際には無線以外の要因がボトルネックになっているケースも非常に多くあります。オフィスネットワークは無線LANだけでなく、有線LAN、スイッチ、ルーター、インターネット回線、さらには認証やセキュリティ機能など、複数の要素で構成されています。どこか一箇所でも処理が追いつかないと、Wi-Fiの体感速度は大きく低下します。
Wi-Fiサーベイで見えること
こうした問題を整理するために役立つのが「Wi-Fiサーベイ(電波調査)」です。ネットワークの専門業者が提供しているWi-Fiサーベイサービスは、電波の強さだけでなく、ノイズ、チャネルの重なり、干渉、利用状況などを測定します。サーベイは活用シーンにより予測サーベイと実測サーベイの2つに分けられます。
予測サーベイと実測サーベイの違い
項目 | 予測サーベイ(新規設置調査) | 実測サーベイ(現状調査) |
|---|---|---|
目的 | 導入前に最適なアクセスポイント配置を計画する | 現在の電波状況が設計通り動いているか確認し、問題を特定する |
取得できる情報 | 電波の到達範囲、推奨AP台数、チャネルプラン | 実際の電波品質、SNR、チャネル利用状況、ローミング挙動 |
タイミング | Wi-Fi新規・増設・入替の導入前、レイアウト設計時 | 運用中のトラブル発生時や定期点検 |
メリット | 無駄な増設を防ぎ、設計精度を高める | 実環境に即した改善策を打てる |
サーベイを実施することで「どこにアクセスポイントを置くべきか」「どのチャネルを使うべきか」「どのような対策をうてばよいか」が明確になります。新規導入や入替、レイアウト変更の際は事前にサーベイしてから設計することで、無駄なアクセスポイントの増設を避け、最小の投資で最大の効果を得られます。
まとめ:「増やせば速くなる」ではなく「測れば速くなる」
オフィスWi-Fiを改善する第一歩は、アクセスポイントを増やすことではありません。現状を測り、設計して、必要な場所に必要な数だけ設置することが重要です。Wi-Fiサーベイを活用すれば、過剰投資を避けながら、速くて安定したネットワークを構築できます。
もし「会議室だけ遅い」「一部の席で切断が多い」「移動すると途切れる」といった課題があるなら、まずは簡易診断から始めましょう。電波強度、ノイズ、チャネルの重複などを見える化して把握するだけでも、改善の方向性は見えてきます。
当社ではWi-Fiサーベイを行う「SCC Wi-Fi診断サービス」をご提供しております。ネットワークでお困りのことがありましたらお気軽にご相談ください。

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