新リース会計基準とは?いつからどう変わるのか概要と影響をわかりやすく解説

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リース会計基準は企業がリース契約をどのように会計処理するかを定める重要なルールです。従来はファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区別して、それぞれ別のアプローチで処理していました。しかし、国際的な基準であるIFRS第16号への整合性を図るため、リース取引をオンバランス処理とする新たな会計基準が策定されました。

この新リース会計基準では、リースを「使用権資産」と「リース負債」として貸借対照表に計上することが基本方針となり、財務諸表の開示や企業の経営指標に大きな影響を与えることが予想されています。リースの定義が広がるため、これまでリースとみなされていなかった取引にも適用が及ぶ可能性があります。

必然的に会計処理が複雑化し、契約内容の洗い出しやシステム対応など、企業が早めに準備することが求められています。本記事では、新リース会計基準の概要と施行時期、現行基準との違い、さらに実務面で気をつけるポイントをわかりやすく解説します。


目次

  1. 新リース会計基準の背景と改正の目的
  2. 新リース会計基準はいつから適用?施行スケジュールを確認
  3. 現行リース会計基準との主な違い
  4. 新リース会計基準による企業への影響と実務上の注意点
  5. よくある質問(FAQ)
  6. まとめ

新リース会計基準の背景と改正の目的

新リース会計基準が導入された背景や、改正によって期待される効果を確認します。

新リース会計基準の導入背景には、国際財務報告基準に則した形で財務情報の透明性を高め、投資家への情報開示を充実させる意図があります。従来の基準では、オペレーティング・リースが貸借対照表に計上されないケースが多く、リース取引の実態が十分に反映されにくいという課題が指摘されていました。こうした背景を受けて、リース契約のほぼすべてを「使用権資産」として計上する方向に大きく舵を切ったのが改正のポイントです。

今回の改正では、国際基準への整合性とともに、企業の実態把握をより正確に行うことが期待されています。貸借対照表にリース資産と負債が計上されることで、企業の財務状況がより明確になり、リース活用の状況や経営リスクの早期把握が可能となります。企業としては、新基準に合わせてリース契約の内容を整理し、経営戦略の観点から継続的なモニタリングを行うことが求められます。


新リース会計基準はいつから適用?施行スケジュールを確認

具体的な適用時期や、企業がどのように準備を進めるべきかを解説します。

新リース会計基準の公表は2024年9月に行われ、企業が具体的にどのタイミングで適用すべきかに注目が集まっています。実際には2027年4月1日以降に開始する事業年度から強制適用が予定されており、これに伴い多くの企業が事前準備を急ぐ必要がある状況です。


2027年度の強制適用と経過措置

新リース会計基準は上場企業や会計監査人を設置する企業を中心に、2027年4月1日以降に始まる事業年度から強制的に適用されます。これまで処理が異なっていたリース契約も、改正に伴い同じルールの下で会計処理を行う必要があります。経過措置として、必要に応じて段階的な導入を認める規定も整備されているため、自社の財務システムや実務プロセスを考慮して、計画的に移行を進めることが大切です。


早期適用の可能性とメリット

新リース会計基準は早期適用も可能とされており、先行して基準に合わせることで投資家や取引先への情報透明性を高めるメリットが見込まれます。ただし、早期適用にはシステム対応や担当者の専門知識習得などの課題もあるため、メリットとデメリットを慎重に検討する必要があります。





現行リース会計基準との主な違い

これまでの基準と比較して、特に変化の大きいポイントを中心に解説します。


リースの定義・識別方法の変更

新基準の下では、リース取引の定義がさらに明確化され、契約内容の中で使用権を移転する要素の有無を厳格に判定することが求められます。リース契約の範囲が拡大される結果、これまでリースと認識していなかった契約も、新基準では適用対象となる可能性があります。企業は契約文言だけでなく、実質的に『使用者が特定の資産を扱う権利』を有しているかどうかを判断する必要があります。




特に「倉庫保管の委託契約」や「物流・輸送の委託契約」「製造の委託契約」については、注意が必要です。

倉庫保管の委託契約は賃借料として経費扱いでしたが、新リース会計基準ではリース扱いになります。倉庫やコンテナだけではなく、店舗/賃借事務所、駐車場、レンタルスペース、・工場敷地/物流センターも該当します。

製造の委託契約や物流・輸送の委託契約において、外部に委託している製造や物流業務に使用される自社専用の金型や加工機材、運送用機材などもリースとして扱われます。
例えば、製造委託先が所有する製造ラインが当社製品の製造専用であり、その製造ラインの使用から得られる経済的利益のほぼ全てを自社が享受する権利を持っている場合、リースに該当する可能性があります。

物流・輸送の委託契約についても、輸送手段の使用権を移転する契約であれば、リースに該当する可能性があります。契約書にシリアル番号や車両番号など、使用するものが特定されていることが前提です。

リースかどうかを識別する際の条件には、次のものがあります。
1. 資産が特定されているか
2. その資産の利用から生じる経済的利益のほとんどすべてを得ることができるか
3. 資産の使用方法を指図する権利を有しているか
契約書に「リース」の記載がなくても、上記を満たすものであればリースと判断される可能性があります。


借手リースは原則オンバランスの対象

ファイナンス・リース、オペレーティング・リースに分類し処理していましたが、新リース基準では借手のリース区分が廃止され、原則すべてのリースはオンバランス処理に一本化されます。そのため、リース取引の会計処理では、取引開始時に資産を計上する仕訳を行い、「使用権資産」を減価償却します。

ただし、少額リースや短期リースについては例外としてオフバランス処理が認められる場合があります。


※短期リースとは:リース期間が12か月以内、購入オプションを含まないリース
少額リースとは:以下の①②いずれかを満たす場合
① 重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、リース料が企業の採用している基準額以下のリース(例:10万円以下)
② 以下の(1)または(2)を満たすリース(どちらかを会計基準として決めて適用)

 (1) リース契約1件あたりの金額に重要性が乏しい(300万円以下)
 (2) 新品時の原資産の価値が少額(5,000米ドル以下/原資産の単位ごと)


財務報告における表示と開示

リース取引で認められる使用権資産は、借手側がリース期間中に資産を使用できる権利に対して評価額を設定し、負債としてのリース料支払い義務を同時に計上します。

「資産」には、「使用権資産」として「リース資産」分を計上する必要があります。「負債」には、「リース負債」として「リース料」分を計上する必要がありますが、1年以内に支払期限が到来するものは「流動負債」、1年を超えるものは「固定負債」に計上する必要があります。

これに伴い、従来のオペレーティング・リース取引も含めて貸借対照表上の総資産と総負債が増大するため、財務指標の変化が起こり得ます。企業の返済能力や資本効率などの指標を評価するうえで、リース負債をどのように考慮すべきかが新たな課題となるでしょう。




新リース会計基準による企業への影響と実務上の注意点

新リース会計基準導入に伴う社内体制整備やシステム対応など、実務面で想定される課題への対処法を示します。


リース契約の洗い出しと管理体制の構築

まずはすべてのリース契約を洗い出し、新基準におけるリース定義に当てはめて分類する作業が必要です。契約によってはサービス要素とリース要素が混在していることもあり、費用配分を分けて計上するための調整が不可欠です。継続的にリース契約管理を行う体制を構築するためにも、システム化や担当者の専門知識強化を図りながら管理を徹底することが推奨されます。


遡及額の計算と新基準に合わせた会計処理を行う必要あり

新リース会計基準の適用開始初年度には、遡及額の計算と、使用権資産およびリース債務の計上など、新基準に合わせた会計処理を行う必要があります。具体的には、過去のリース契約についても新基準に遡って計算を行い、使用権資産とリース債務の期首残高を調整し、期首に仕訳を計上する必要があります。



よくある質問(FAQ)

新リース会計基準に関してよくある疑問点への回答をまとめました。

Q1: 新リース会計基準は全業種が対象ですか? A1: 原則としてすべての業種とリース取引を対象としていますが、適用時期や特定の分野で例外規定がある可能性もあるため、細則を確認してください。
Q2: オペレーティング・リースはもうなくなるのでしょうか? A2: 従来のオペレーティング・リースという名称こそ廃止されますが、取引の実態に応じて使用権資産として計上される形に変わります。
Q3: 早期適用を選んだ場合、どのようなメリットがありますか? A3: 国際基準との整合性を早期にアピールでき、投資家への開示や海外展開のスピードアップにもつながります。ただし導入コストや体制整備が膨大になるため、見通しを立てたうえで慎重に判断してください。


まとめ

リース会計基準の改正意図や主要な変更点を再確認し、企業が早めに検討・準備を始める重要性をお伝えしました。

新リース会計基準は、国際的な財務報告基準との整合性を図りつつ、企業のリース取引をより正確に貸借対照表へ反映させることを狙いとしています。特に2027年4月以降、強制適用となることから、多くの企業は事前に充分な準備が必要です。リースの定義や適用範囲の拡大、オンバランス処理への移行など、実務担当者にとっては大きな変化となるでしょう。

ただし、透明性の向上やリスク管理の強化など、多くのメリットも期待できます。新基準へスムーズに移行するために、リース契約の再点検とシステム整備、担当者の教育などを早めに進めておくことが欠かせません。改正の背景や概要を理解して社内体制を整備することで、企業競争力を高めるきっかけにしていきましょう。

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