
【後編】新リース会計基準で何が変わる?概要と実務対応のポイント
⇒【前編】新リース会計基準で何が変わる?概要と実務対応のポイントの続き
前編では、新リース会計基準の基本的な考え方や旧基準との違い、オンバランス化による財務への影響など、制度全体の枠組みを整理しました。
本記事【後編】では、新リース会計基準の実務対応に焦点を当て、借手の会計処理フローを中心に、リース開始時の処理、割引率の設定、契約条件変更時の対応を整理します。あわせて、貸手の会計処理や注記、企業経営への影響、実務対応ステップとシステム導入のポイントについても解説します。
借手(リース利用者)の会計処理フロー
借手にとって重要なポイントは、オンバランス化を前提に、資産・負債をどのタイミングでどのように計上・管理するかを整理することです。
重要な契約条件の変更や、更新・解約の意思決定に影響する事実が生じた場合には再評価が必要となります。管理体制を構築しないと、更新や解約オプションを見落とすリスクがあるため、経理部門と事業部門の連携がカギとなるでしょう。
リース開始日の処理と使用権資産の計上
リース開始時には、まずリース負債として将来支払うリース料の現在価値を算定し、同額を使用権資産として資産計上します。使用権資産は、リース期間または耐用年数に基づき、定額法等で体系的に減価償却され、貸借対照表および損益計算書に反映されます。
リース負債の算定と割引率の設定
リース負債は将来のリース料支払総額を割引いて算定されます。割引率としては、通常リース契約の固有の利率、または借手の追加借入利率を用いるケースが多くなります。
割引率の設定によってリース負債および使用権資産の初回計上額に差が生じるため、慎重に決定しなければなりません。特に低金利環境下では、わずかな金利の変動が大きな金額に影響を与えることもあります。
リース期間の決定・契約条件変更時の対応
リース期間は、契約更新オプションや解約オプションを考慮して決定します。契約上、更新が確実視されるのであればリース期間を延長し、負債を増やして計上する必要があります。
契約条件の変更やオプション行使によりリース期間が変動した場合には再評価が必要となるため、契約管理を含めた事業部門との連携が不可欠です。
貸手(リース会社)の会計処理と注記
貸手側は従来と比べて大きな変更点は少ないとされていますが、新基準で求められる注記や留意点があります。
ファイナンスリースとオペレーティングリースの会計処理上の違い
貸手にとってファイナンスリースは、資産を借手に実質移転し、リース料の回収を通じて利息相当分を収益として計上する仕組みです。借手が資産とリース負債をオンバランス化するのに対し、貸手は貸付金形態として扱い、元本と利息の回収を行います。
一方、オペレーティングリースでは貸手が資産を保有し続け、貸手の貸借対照表にリース資産が計上されます。リース収益は定期的に計上され、資産の減価償却も貸手側が行います。
この区分は貸手のビジネスモデルや収益計画に直結するため、新基準のもとでも変わらずに重要な要素です。ただし、借手側のオンバランス化との組み合わせでどのように貸手の財務諸表に影響を与えるのかを注視する必要があります。
貸手の注記事項と実務上の注意点
貸手はリース契約の内容や保有資産の状況を詳細に開示することが求められます。特にオペレーティングリースでは、リース期間中の減価償却や保有資産に関する費用構造が適切に理解できるよう、必要な情報開示が求められます。
ファイナンスリースの場合、貸手側が認識する貸付金の回収計画や債務不履行のリスクなども重要な開示事項となります。借手の信用リスク管理とあわせて検討することで、ステークホルダーに正確な予測情報を提供できます。
リース契約の詳細やリース債権の評価に関する開示は、投資家や金融機関の判断材料となるため、適切な内部統制を構築して正確な情報を提供することが重要です。
新リース会計基準が企業経営に与える影響
オンバランス化によって変化する財務諸表上の数値は、企業の経営戦略やステークホルダーとの関係にも大きなインパクトを及ぼします。
財務諸表や財務指標への影響
オンバランス化により総資産が増え、自己資本比率やROAといった比率が低下する可能性があります。従来のオフバランス処理を想定していた計画や目標値との比較には注意が必要です。
EBITDAはリース料の取り扱いが変更されることで増減が発生する場合もあり、業界によっては指標を用いた比較分析が複雑化する恐れがあります。企業間比較を行う際には、新基準の影響を考慮した解釈が欠かせません。
一方で、財務諸表の透明性は高まるため、投資家や金融機関とのコミュニケーションがスムーズになる効果も期待できます。新基準導入後は、数値の変動要因を丁寧に説明することが企業イメージの向上にもつながります。
社内外のステークホルダーとのコミュニケーション
オンバランス化に伴う財務数値の変動は、社内経営陣や従業員への情報共有にも影響を与えます。業績評価やインセンティブプランの見直しが必要になるケースもあります。社内外のステークホルダーに対して早期かつ丁寧に説明し、理解を得ることが重要です。
実務対応ステップとシステム導入の検討
新基準適用にあたっては、リース契約の調査とシステム面のアップデートを含む多岐にわたる実務対応が求められます。
現行契約の洗い出し・再評価
リース契約数が多い企業ほど、現行契約の洗い出し作業を計画的に進める必要があります。契約期間や使用資産の内容、更新権・解約権の有無など、あらゆる要素を確認し、新基準でどう扱われるかを判断します。
契約数が数百件単位になる場合は、経理部門だけではなく現場や管理部門を巻き込んだプロジェクトチームの結成が有効です。Excelや専用ツールを活用して管理することで、漏れを防ぎながら効率よく作業を進められます。
再評価の結果、思いがけずリース定義に該当する取引が見つかることもあります。経営陣への早期報告と方針決定が不可欠であり、この段階で不明点を洗い出すことが、後々のトラブルを防止する鍵となります。
新リース会計基準が財務諸表へ与える影響額を試算するための専用ツールです。リース期間やリース料を入力するだけで簡単に試算でき、将来にわたる影響額の推移も確認できます。
>「新リース会計基準」 影響額試算ツール
経理・ERPシステムの対応状況
既存の経理システムやERPが新基準に対応していない場合、リースの使用権資産やリース負債を計算するために手作業が増え、業務効率の低下につながるおそれがあります。
リース取引の情報を自動的に取り込み、割引率や減価償却などの会計処理を一元管理できるシステムがあれば、担当者の負荷を軽減できるだけでなく、ヒューマンエラーの防止にも役立ちます。
システム導入にはコストがかかりますが、新基準への長期的な対応を考えれば早期の導入検討は得策です。企業規模や取引量に応じたシステム選定を進め、運用要件を明確にすることが成功のカギです。
導入スケジュールと社内体制整備
実際の対応には相応の時間がかかるため、導入スケジュールを明確にし、段階的に進めることが重要です。特に契約更新や解約が多い企業では、スケジュール管理が複雑になりがちです。
早期適用を行う企業もあるため、業界内の動向や先行事例を調査することで、よりスムーズな導入が期待できます。ベンダーや監査法人との連携も欠かせません。
社内研修やマニュアル整備など、経理部門だけでなく契約管理部門や事業部門も含めた体制づくりを進めることが、実務上の混乱を最小限に抑えるポイントです。
まとめ・総括
新リース会計基準への対応では、借手・貸手それぞれの会計処理を理解したうえで、オンバランス化が経営や業務に与える影響を整理することが重要です。特に借手においては、割引率やリース期間の見積り、契約変更時の再評価など、継続的な管理が求められます。
本記事で整理した実務対応のポイントを踏まえ、自社に適した体制とシステム整備を進めていきましょう。

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