
高速回線を導入したのに通信が遅い?見落とされがちな社内ネットワークの確認ポイント
インターネット回線の速度向上を目的に、高速回線への切り替えを検討する企業は少なくありません。しかし、「回線を高速化したのに通信が快適にならない」「Web会議が途切れる」「クラウドサービスの動作が遅い」といった悩みを抱える企業も多く見受けられます。
実は、通信環境の快適さはインターネット回線だけで決まるものではありません。高速回線を導入しても、その性能を十分に活かせる社内ネットワーク環境が整っていなければ、期待した効果を得られないことがあります。
本記事では、高速回線導入時に見落とされがちな社内ネットワークの課題と、快適な通信環境を実現するために確認したいポイントについて解説します。
インターネット回線を高速化しても快適にならない理由
通信速度の改善を目的として回線を増強したにもかかわらず、利用者の体感が変わらないケースがあります。その原因の一つが、社内ネットワークに存在するボトルネックです。
インターネット通信は、回線だけで構成されているわけではありません。オフィス内にはルータやスイッチングハブ、LANケーブル、Wi-Fiのアクセスポイントなど、さまざまな機器が存在し、それらを経由して通信が行われています。
インターネット回線を高速化しても、社内で使用しているLANケーブルやスイッチングハブ、ルータ、アクセスポイントなどが高速通信に対応していなければ、本来の回線性能を十分に発揮できません。また、機器の処理能力不足や配線の規格がボトルネックとなり、通信速度が制限される場合もあります。そのため、回線だけでなく社内ネットワーク全体の状況を確認する必要があります。
近年はグループウェアやファイル共有などのクラウドサービスの利用や、Web会議の常態化により、企業の通信量は増加傾向にあります。そのため、以前は問題なく利用できていたネットワーク環境でも、現在の利用状況では通信の遅延や速度低下が発生し、業務効率に影響を及ぼす場合があります。こうした状況から、定期的にネットワーク環境を見直し、現状の利用実態に適した構成となっているか確認することが重要です。
高速回線導入時に見直したい社内ネットワークのポイント
高速回線を導入しても、社内ネットワークを構成する機器や配線が対応していなければ、本来の性能を十分に活かすことはできません。例えば、1Gbpsや10Gbps対応のインターネット回線を契約していても、社内ネットワークに低速な機器や古い配線が混在していると、それらがボトルネックとなり、本来の通信速度を発揮できません。
そのため、高速回線の導入時には回線そのものだけでなく、社内ネットワーク全体の構成を確認することが重要です。特に「LANケーブル」「スイッチングハブ」「ルータ」「Wi-Fi環境」の4つは重点的に見直したいポイントです。
LANケーブル
まず確認したいのがLANケーブルです。
LANケーブルには「Cat(カテゴリー)」と呼ばれる規格があり、対応できる通信速度が異なります。長年利用しているオフィス、貸事務所などでは既設のLANケーブルをそのまま利用しているケースも多く、配線自体が高速通信の妨げになっている場合があります。
代表的な規格は以下のとおりです。
- Cat5:最大100Mbps
- Cat5e:最大1Gbps
- Cat6:最大1Gbps(短距離なら10Gbps対応)
- Cat6A:最大10Gbps
- Cat7以上:10Gbps以上に対応
例えば、10Gbps回線を導入しても途中にCat5ケーブルが使用されている場合、その区間では100Mbpsまでしか通信できません。
また、ケーブルの規格だけでなく、長年の使用による劣化やコネクタ部分の接触不良、無理な折り曲げなども通信品質の低下につながります。オフィス移転やレイアウト変更を繰り返している企業では、新旧の配線が混在しているケースも少なくありません。高速回線の導入を機に、配線環境全体を確認することが重要です。
スイッチングハブ
次に確認したいのがスイッチングハブです。
スイッチングハブは、PCやプリンター、サーバー、アクセスポイントなど複数の機器を接続するためのネットワーク機器です。社内ネットワークの中継地点ともいえる存在ですが、古い機器では通信速度が十分でない場合があります。
例えば、現在でも一部の企業では100Mbps対応の「Fast Ethernet Switch」が利用されていることがあります。1Gbps回線や10Gbps回線を導入しても、このスイッチングハブを経由する通信速度は100Mbpsまでに制限されます。
また、近年はネットワークに接続される機器が大幅に増加しています。
- ノートPC
- スマートフォン
- タブレット
- ネットワークプリンタ
- NAS(ファイルサーバ)
- IP電話
- 監視カメラ
- Wi-Fiアクセスポイント
これらが同時に通信を行うことで、スイッチングハブに大きな負荷がかかります。
特にクラウドストレージへのバックアップ、大容量ファイルの共有、Web会議などが同時に発生すると、古いハブでは処理能力が不足し通信の遅延や速度低下を招くことがあります。高速回線を活かすためには、1Gbps対応のスイッチングハブを導入し、利用状況によっては2.5Gbps対応(マルチギガスイッチ)や10Gbps対応のスイッチングハブへの更新を検討する必要があります。
ルータ
ルータも高速回線の性能を左右する重要な機器です。
ルータはインターネットと社内ネットワークの間で通信を制御する役割を担っています。回線速度が速くても、ルータの処理能力が不足していると通信速度はそこで頭打ちになってしまいます。
特に近年は、単純なインターネット接続だけでなく、
- VPNを利用したリモートワーク
- クラウドサービス
- ファイアウォール機能
- UTM(統合脅威管理)
- Webフィルタリング
- 拠点間VPN接続
などを利用する企業が増えています。
これらの機能はルータのCPUやメモリに大きな負荷をかけます。カタログ上では1Gbps対応と記載されているルータであっても、VPNやセキュリティ機能を有効化した状態では実効速度が数百Mbps程度まで低下する場合があります。
また、導入から5年以上が経過しているルータでは、現在の通信量やクラウド利用を想定していないケースもあります。利用者から「回線を速くしたのに改善しない」という声が出る場合、原因がルータにあることも少なくありません。
Wi-Fi環境
最後に確認したいのがWi-Fi環境です。
近年はノートPCやスマートフォン、タブレットの利用が一般的になり、多くの企業でWi-Fiが導入され、業務の中心となっています。そのため、利用者が実際に体感する通信速度や快適さはWi-Fi環境に大きく左右されます。
Wi-Fiにも世代ごとの規格があり、性能には大きな違いがあります。
Wi-Fi規格 | 規格名 | 最大通信速度 | 主な特徴 |
Wi-Fi 7 | IEEE 802.11be | 約46Gbps | 超高速・低遅延通信に対応 |
Wi-Fi 6E | IEEE 802.11ax | 約9.6Gbps | 6GHz帯対応で混雑を回避 |
Wi-Fi 6 | IEEE 802.11ax | 約9.6Gbps | 多数端末接続時の効率向上 |
Wi-Fi 5 | IEEE 802.11ac | 約6.9Gbps | 高速化、大容量通信に対応 |
Wi-Fi 4 | IEEE 802.11n | 約600Mbps | 一般的な無線LANとして普及 |
古いアクセスポイントでは通信速度だけでなく、同時接続台数にも限界があります。
例えば以前はノートPC数十台程度の接続を想定していたWi-Fi環境でも、現在では社員のスマートフォンやタブレット、IoT機器なども接続されるため、アクセスポイントへの負荷は大幅に増加しています。
さらに、
- アクセスポイントの設置場所が適切でない
- 会議室など特定エリアに利用者が集中している
- 隣接テナントのWi-Fiと電波干渉を起こしている
- Bluetooth機器や電子機器の影響を受けている
といった要因も通信品質を低下させます。
実際にはインターネット回線側に十分な余裕があっても、Wi-Fi環境が原因で「Web会議の映像が途切れる」「クラウドサービスの反応が遅い」「ファイルのダウンロードに時間がかかる」といった問題が発生するケースもあります。
高速回線の導入効果を最大限引き出すためには、アクセスポイントの性能や設置場所、利用人数、電波状況などを総合的に見直すことが重要です。
ネットワーク改善は現状把握から始まる
ネットワークの課題を解決するためには、まず現状を正しく把握することが重要です。
通信が遅いと感じる場合、多くの企業では回線速度の測定を実施します。しかし、速度測定だけでは根本原因を特定できるとは限りません。
例えば、特定の会議室だけ通信が不安定だったり、あるフロアでのみ速度低下が発生していたりする場合、原因は回線ではなくWi-Fiの電波状況にある可能性があります。また、特定の時間帯だけ通信が遅くなる場合は、利用状況や機器の処理能力が影響していることも考えられます。
そのため、ネットワーク改善に取り組む際は、以下のような観点から調査を行うことが重要です。
- ネットワーク機器の構成や性能
- LAN配線の規格や状態
- Wi-Fiの電波状況やアクセスポイント配置
- 通信量や利用状況の傾向
課題を可視化せずに機器を入れ替えたり回線を増強したりしても、期待した効果が得られない可能性があります。まずは現状を把握し、どこにボトルネックがあるのかを明確にすることが、効率的なネットワーク改善への第一歩です。
Wi-Fi環境の見直しなら「SCC Wi-Fi診断サービス」
社内ネットワークの中でも、近年特に重要性が高まっているのがWi-Fi環境です。
クラウドサービスの利用拡大やハイブリッドワークの普及により、企業ネットワークはこれまで以上にWi-Fiへの依存度が高まっています。しかし、Wi-Fi環境は目に見えないため、課題の発見や改善が難しいという特徴があります。
三和コンピュータ株式会社が提供する「SCC Wi-Fi診断サービス」は、企業のWi-Fi環境改善を支援するサービスです。現地調査を通じて電波状況や利用環境を把握し、オフィスのレイアウトや利用状況に合わせた最適なWi-Fi環境の設計・構築を支援します。
また、アクセスポイントの配置や運用面も含めて改善ポイントを整理し、通信品質の向上に向けた具体的な提案を行います。
「高速回線を導入したのに思ったほど快適にならない」「Wi-Fiが不安定で業務に支障が出ている」といった課題を抱えている企業は、一度Wi-Fi環境そのものを見直し、現状の課題を把握してみてはいかがでしょうか。
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まとめ
高速なインターネット回線を導入しても、必ずしも通信環境が改善するとは限りません。LANケーブルやスイッチングハブ、ルータ、アクセスポイントなど、社内ネットワークのどこかにボトルネックが存在すると、回線本来の性能を十分に活かせなくなるためです。
特にクラウドサービスやWeb会議の利用が増加している現在では、Wi-Fi環境を含めた社内ネットワーク全体の最適化が重要になっています。
通信環境の改善を検討する際は、回線速度だけに注目するのではなく、まず現状を把握し、どこに課題があるのかを明確にすることが大切です。その上で適切な対策を実施することで、高速回線の性能を最大限に活かした快適なネットワーク環境の実現につながるでしょう。

