新リース会計基準がもたらす損益計算書・キャッシュフローへの変化とその対応【後編】

【後編】新リース会計基準がもたらす損益計算書・キャッシュフローへの変化とその対応

【前編】新リース会計基準がもたらす損益計算書・キャッシュフローへの変化とその対応の続き

前編では、新リース会計基準が損益計算書やキャッシュフロー計算書に与える影響を中心に、制度変更の全体像を解説しました。

本記事【後編】では、借手(借り手側)を中心に、リース契約の洗い出しから会計処理フロー、契約条件変更時の対応、さらには貸し手側の留意点や税務実務への影響について整理します。

目次[非表示]

  1. 1.借手(借り手側)の会計処理と実務対応
    1. 1.1.会計処理フローと使用権資産の償却
    2. 1.2.リース契約条件の変更・見直し
    3. 1.3.セール・アンド・リースバック取引への対応
  2. 2.貸手(貸し手側)の会計処理と実務対応
    1. 2.1.ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違い
    2. 2.2.貸し手側の開示ポイント
  3. 3.財務諸表・経営指標・税務実務への影響
    1. 3.1.貸借対照表・損益計算書・キャッシュフローへの総合的インパクト
    2. 3.2.減損会計基準と親子会社間取引への留意点
    3. 3.3.税務実務における取り扱いと課題
  4. 4.よくあるQ&A
    1. 4.1.Q1. サービス契約やメンテナンス契約もリースに該当しますか?
    2. 4.2.Q2. 簡便処理はどのような場合に適用できますか?
    3. 4.3.Q3. 新基準導入時の経過措置はどのように考えればよいですか?
  5. 5.まとめ・総括
  6. 6.新リース会計基準に標準対応 「固定資産奉行V ERPクラウド」 紹介資料

借手(借り手側)の会計処理と実務対応

本章では、借り手側が新リース会計基準に対応するうえでの主な実務上の論点を整理します。

会計処理フローと使用権資産の償却

会計処理フローとしては、まず契約内容の確認および「リースに該当するかどうか」の判断を行ったうえで、リース契約の開始日にリース負債を計上し、同額の使用権資産を認識することから始まります。リース負債は支払うべきリース料を割引した現在価値で算出され、割引率の設定や変動リース料の取り扱いについても、契約内容に応じた検討が必要となります。使用権資産には初期直接費用なども含めます。

その後、使用権資産については社内の固定資産管理ルールに基づき償却方法や耐用年数を設定して減価償却費を定期的に計上します。また、リース負債については返済スケジュールを管理しながら元本返済額と支払利息をそれぞれ区分して処理します。元本部分はリース負債の減少として貸借対照表に反映され、利息部分は損益計算書の支払利息として認識されます。

リース契約条件の変更・見直し

リース契約期間中に契約条件が変更された場合、使用権資産とリース負債の再評価が必要となります。契約更新の決定やリース料の減額などがあった際には、残存リース期間の見直しや割引計算の再調整が起こり得ます。

この際、リース契約の変更がリース延長とみなされるか、条件の修正として扱われるかによって会計処理が異なる点に注意が必要です。リース期間の延長を検討する場合は、合意条件が確定する前に財務影響を試算し、適切な会計処理を検討しましょう。

セール・アンド・リースバック取引への対応

セール・アンド・リースバック取引においては、新リース会計基準の導入後、売却に伴う損益認識が厳密に制限される場合があります。

基本的には、売却が適切に認識されるためには、実際に資産移転が起こることが証明されなければなりません。同時にリースバック契約が締結されるため、オンバランス化された使用権資産とリース負債の計上方法を慎重に判断する必要があります。

この取引はキャッシュ調達手段として活用される場合が多いものの、新基準下ではリース負債の増加等による財務指標への影響を考慮する必要があります。契約条件の設定次第では、想定外の損益が生じる可能性もあるため、十分な検討が求められます。

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貸手(貸し手側)の会計処理と実務対応

貸し手側の会計処理は、新リース会計基準の導入後も基本的な枠組み自体に大きな変更はありません。ただし、リース契約の内容や実態に応じた判断や対応が、これまで以上に重要になります。

ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違い

貸し手側では、契約期間を通じて実質的なリース料の回収が行われるファイナンス・リースと、リース資産が貸手に残存価値として帰属しやすいオペレーティング・リースとを区別する必要があります。ファイナンス・リースに該当すれば、貸手は貸付金のようにリース料を未収金として計上し、リース収益を認識します。

オペレーティング・リースの場合は、貸手が資産を保有している状態で、リース料を受取時に収益として認識します。新基準でも貸し手側の処理は大きく変更されないとされていますが、実質的にファイナンス・リースとみなされる契約が増えることが想定されます。

貸手が保有するリース資産の会計処理では、リース資産の減価償却や残存価値の見積りが重要です。リース終了時の資産処分や再リースの可能性も考慮しながら、適切な会計処理を行うことが求められます。

貸し手側の開示ポイント

新リース会計基準の導入によって、貸し手側にも開示すべき情報が増加する可能性があります。具体的には、将来受取リース料のスケジュールやリース資産の残存価値、貸手にリスクや報酬がどの程度帰属するかといった情報が対象となります。

また、信用リスクや残価リスクの管理状況など、貸し手側のリスク開示が重要になります。これに対応するため、契約管理や情報管理体制の整備が求められます。

財務諸表・経営指標・税務実務への影響

新リース会計基準の適用は、財務諸表や経営指標、さらに税務実務にも広範囲に影響します。

貸借対照表・損益計算書・キャッシュフローへの総合的インパクト

貸借対照表では使用権資産およびリース負債が計上されることで、リースを利用している企業の資産負債規模が大きく見えます。これにより、他社との比較を行う際には、借入金の多寡だけでなくリース負債を含めた資本構成を見る必要があるでしょう。

損益計算書ではリース料の計上方式が変化し、減価償却費と支払利息の2つに分割されることで、営業利益と財務費用の増減に影響が出る可能性があります。キャッシュフロー計算書でも、財務活動によるキャッシュフローの負担感が増すことが予測されます。

全体として、従来のオフバランス処理によるキャッシュアウトの不透明さが解消される反面、企業の財務指標や計数管理に大きな変化が生じることから、新基準導入の影響評価に時間をかける必要があります。

減損会計基準と親子会社間取引への留意点

使用権資産は減価償却だけでなく、減損会計基準にも留意が必要です。リース物件の見込み収益や稼働実態によっては減損リスクが高まる場合があり、リース資産の価値を定期的に見直す必要があります。

また、グループ内取引(親子会社間のリースなど)においては、連結決算対象となるため実態に即した処理が求められます。取引価格やリース条件の設定が適切であるかどうかを厳密に判断しなければ、親子会社間で不適切な利益操作が行われる懸念が生まれかねません。

これらの問題に対処するためには、グループ全体でのリース管理プロセスを整備し、経理チームや内部監査部門が相互に監視・連携できる仕組みを築くことが重要です。

税務実務における取り扱いと課題

税務上、リース取引は以前から“リース料”として一括計上するケースが主流でしたが、新基準導入後は減価償却費と利息部分に分割されるため、税務申告における処理が複雑化します。とくにリース料の前払いや変動リース料がある場合は、正確な費用配分が重要となります。

税務調整を行う際のポイントは、会計上と税務上でリース取引の認識がずれないようにすることです。会計上の使用権資産とリース負債計上が税法上どのように取り扱われるか、監査法人や税理士との事前協議が求められます。

また、今後の税制改正の動向にも注意が必要です。国際的な会計基準との整合を図るため、租税法の改定が行われる可能性があり、その内容次第でリース会計と税務実務の手続きがさらに変化することが考えられます。

よくあるQ&A

新リース会計基準を適用する際に、多くの企業から寄せられる代表的な疑問について、Q&A形式で解説します。経理部門や情報システム部門が実務で迷いやすいポイントを中心に整理しています。

Q1. サービス契約やメンテナンス契約もリースに該当しますか?

原則として、サービスのみを提供する契約はリースには該当しません。新リース会計基準では、「特定の資産の使用権が借手に移転しているかどうか」が判断の軸となります。そのため、資産の使用が契約の主目的ではなく、役務提供が中心となる契約は、リースに該当しないケースが一般的です。

ただし、契約内容が複雑な場合には注意が必要です。例えば、特定の設備が明示されており、その使用が実質的に企業の裁量下にある場合には、リースに該当する可能性もあります。サブスクリプション型サービスなどについては、使用権の有無や資産の特定性を踏まえ、社内で判断基準を統一しておくことが実務上有効です。

Q2. 簡便処理はどのような場合に適用できますか?

新リース会計基準では、短期リースや少額リースについて、一定の要件を満たす場合に簡便処理が認められています。簡便処理を適用すると、使用権資産やリース負債を計上せず、リース料を従来どおり費用として処理することが可能です。

一方で、契約更新オプションが含まれている場合や、実態としてリース期間が長期に及ぶと判断される場合には、簡便処理を適用できないケースもあります。適用可否の判断にあたっては、契約内容だけでなく、管理負荷や運用面への影響も考慮し、社内で明確な基準を定めたうえで一貫した運用を行うことが重要です。

Q3. 新基準導入時の経過措置はどのように考えればよいですか?

新リース会計基準の導入にあたっては、過去の契約に対する影響を緩和するための経過措置が設けられる場合があります。例えば、すべての契約を一斉に再評価するのではなく、契約区分ごとに段階的に対応する方法を選択する企業も見られます。

経過措置の利用は企業の任意であるため、自社の契約数やシステム対応状況、業務負荷を踏まえて方針を決定することが重要です。経理部門だけでなく、情報システム部門や調達部門などの関連部門と連携しながら、無理のない形で移行を進めることが、実務上の負担を抑えるポイントとなります。

まとめ・総括

新リース会計基準への対応は、単なる会計処理の見直しにとどまらず、契約管理、システム対応、税務、経営指標の説明まで含めた全社的な取り組みとなります。特に借り手側では、使用権資産とリース負債の算定、契約変更時の再評価、減損リスクへの対応など、継続的な管理体制が不可欠です。

また、リース契約数が多い企業ほど、Excel管理には限界があり、会計・契約・支払情報を一元管理できる仕組みの重要性が高まります。新基準への対応を機に、リース管理や会計業務の効率化を検討することは、将来的な業務負荷の軽減にもつながるでしょう。

新リース会計基準の本格適用に向けて、早期に論点を整理し、必要な体制やシステムを整えることが、スムーズな移行の鍵となります。

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