サーマルカメラを活用した産業関連施設や製造工場での火災対策
産業施設や製造工場では、火災リスクが常に存在するため、早期発見と迅速な対応が命を守り、大きな損失を防ぐ鍵となります。機械の熱異常や、破砕作業や廃棄物処理などの工程で発生する粉塵、木材加工工場では、木くずチップ・木粉を集める集塵機などから予期せぬ火災が発生する可能性あります。そのようなときにサーマルカメラが重要な役割を果たします。この技術を活用することで、人の目では見えない熱の異常を検知し、火災が発生する前に警告することが可能になります。
本ブログでは、サーマルカメラを用いた火災対策の重要性を探り、産業関連施設や製造工場での火災を未然に防ぐための方法を紹介します。
はじめに:工場火災のリスクと対策の必要性
工場や産業施設では、機械の故障や製造過程における火花、化学物質の扱いなどの火災リスクがあります。工場火災は、従業員の安全はもちろん、経済的損害や企業の信用にも大きな影響をもたらします。そのため、火災に繋がる要因を特定し予防措置を講じることが重要であり、火災発生時の迅速な対応策も不可欠です。
火災が起こる原因
工場・作業場での火災は、機械設備の過熱、電気的ショート、人為的ミスなどから発生することが多いです。消防局のデータによると工場・作業場の火災のうち、製造業が全体の6割以上を占めています。発火源としては、電気設備や器具等が53.8%、ガス・石油器具等が18.3%となっています。※1これらの施設においては、高温で稼働する機械や電気設備が多く配置されているため、過熱や不適切な使用によるショートを起こすことがあります。
例えば、常に高温で動作する金属加工機械の適切な冷却が行えていない場合、温度が異常上昇し火災リスクを高めることがあるのです。また、電気配線の不備や適切でない延長コードの使用がショートを引き起こし、結果的に火災に繋がるケースも珍しくありません。これらの原因を理解し、適切な対策を講じることが、工場における火災予防には極めて重要です。
※1参照:東京消防庁."東京消防庁 電子図書館".令和5年版 火災の実態 第7章 7工場・作業場.2024-6-13.https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-cyousaka/kasaijittai/r05/index.htmlサーマルカメラによる火災対策のメリット
サーマルカメラによる火災対策が産業施設や製造工場における安全対策のひとつとして注目されています。サーマルカメラは、人間の目や従来の監視カメラでは捉えられない初期の火災発生の兆候を検出することができます。熱を感知し可視化することで、機械の過熱や異常発熱など、火災の典型的な前兆をとらえ、早期に対処することが可能になるのです。この技術による早期検知は、大規模な災害への発展を未然に防ぎ、損失を最小限に抑えることに貢献します。
温度を可視化するサーマルカメラとは
サーマルカメラは、物体から放出される赤外線を感知して温度を可視化する装置です。人やものに対して温度が高いところは赤く、低いところは青く、物体の温度分布をリアルタイムで視覚的に表現できます。この特性により、サーマルカメラは異常な熱を放つ箇所をすぐに特定可能とし、隠れた発火点の早期発見に繋がります。
また、サーマルカメラは光ではなく物体が放出している目には見えない電磁波(遠赤外線)を捉えて映し出すため、光源のない暗所や逆光などで明るすぎる場所といった光源の環境に捉われることなく撮影が可能です。そのため視界の悪い場所でも状態監視を行うことができます。
このように、サーマルカメラは火災の早期発見やリスクの最小化に大きく寄与することができます。
工場火災の影響とサーマルカメラの役割
工場火災は生産停止や経済的損失をもたらすため、火災対策が極めて重要です。火災が発生すると、工場の機能が停止し、製品の供給遅延や修復費用など直接的な経済損失が発生します。さらに、従業員の安全や環境への影響も深刻な問題となります。
サーマルカメラは異常な熱を早期に検知できるため、工場火災の予兆の早期発見と防止に貢献します。異常な温度をリアルタイムで可視化してアラートを発することができるため、火災が発生する前の初期段階で、異常を検知し対処することが可能となります。高性能なサーマルカメラであれば温度変化が起こった時のアラート条件を0.05度刻みで細かく設定することが可能なため、見た目だけでは問題が把握できないような異常発熱を検知することで機器の故障や火災リスクを低減します。
また、前項で触れた通り、サーマルカメラは暗所や視界が悪い場所でも温度変化を捉えることが可能なため、夜間や無人工場など監視が必要な産業関連施設や製造工場でも活用できます。
サーマルカメラによる火災予兆早期発見の仕組み
産業施設や製造工場では、火災は避けられないリスクの一つです。サーマルカメラを用いて火災予兆を早期に発見し、被害を最小限に抑える仕組みは非常に重要です。火災の予兆を発見し対処することで、人命や財産への損害を最小化できるからです。また、火災による製造中断などの間接的な損失も避けられます。
サーマルカメラは、物体から放出される熱を可視化する技術を活用しています。そのため、通常の視覚では捉えられない微小な温度変化を検知することにより、火災発生の兆候を早期に察知し、さらに大きな災害への発展を防ぐ役割を果たしています。
異常熱検知のプロセスとアラートシステム
サーマルカメラは異常な熱を検知し、火災発生のリスクを早期に警告することができます。特に工場内では火災の原因となりうる機械の過熱や化学反応による異常な温度上昇が発生することもあるため、サーマルカメラはこのような異常熱を検出し、人の目では見えない初期段階の火災リスクを検知することが可能です。
例えば、製造ラインのモーターが過熱している場合、サーマルカメラはその温度の異常上昇を捉え、アラートシステムを通じて管理者や関係者に即時に警告を発することができます。これにより、発火前に適切な対策がとれるため、大きな火災に発展するリスクを減らし、産業施設や製造工場の安全性を高めることができます。
人の目では捉えられない環境下での検知
人間の視覚は可視光線の範囲内でしかものを認識できず、暗闇や煙が充満した環境ではほとんど機能しないという欠点があります。産業施設や工場では、取り扱っている素材や工程によって蒸気ボイラーによる湯気や木材処理などの木くずチップといった粉塵などが舞い上がり視界が悪くなってしまうといった場合があります。これに対し、サーマルカメラは人間の目では確認することのできない環境下でも遠赤外線を検知し物体を捉えているため可視光線に依存せず、暗闇や煙の中でも動体を捉えることが可能です。
広範囲の温度変化検知
サーマルカメラは広範囲にわたる温度変化を効果的に検知できる技術を持っています。近年のニューノーマルな生活ではサーマルカメラを体表温度の検知を目的とした活用でその存在が身近になりました。店舗や施設の出入口に置かれる体表温検知を目的としたサーマルカメラはコンパクトなものが多く、映し出される映像もカメラと一体型のディスプレイに表示されるタイプが一般的です。
しかし、対個人用のディスプレイ一体型の小型サーマルカメラではなく、防犯カメラのような天井や壁に設置するタイプの高性能なサーマルカメラであれば、広範囲の温度変化を捉えることができます。設置場所を工夫することで少ないカメラ台数でも製造工場や産業施設の広大なエリアの異常温度を素早く発見し、火災リスクの早期把握が可能になります。この早期の火災リスク検出は、大規模な損失や事故を未然に防ぎ、工場や産業施設の安全保障に重要な役割を果たします。
サーマルカメラを用いることで、従来の監視システムや火災報知器では困難だった広範囲の監視および異常熱の迅速な検知が可能となるため、産業施設における安全管理及び火災予防に新たな解決策を提供します。
サーマルカメラ導入時の検討ポイントと準備事項
サーマルカメラの導入を検討する際は、その選定にあたって複数の要素が重要となります。主に機能、精度、耐久性に注目する必要があります。サーマルカメラは温度測定を行い、長期間にわたって運用することが想定されるため、購入する前に仕様を詳しく確認し、性能を検証することが重要です。例えば、産業用途に適したサーマルカメラを選択する場合には、微細な温度変化も検知可能な高精度なモデルを選ぶ必要があります。また、過酷な環境下で使用することも想定されるため、耐久性の高い製品の選択が求められます。
さらにサーマルカメラ導入の際には、設置場所や条件に応じたカスタマイズオプションの有無や、アフターサポートも大きなポイントとなります。サーマルカメラを実際の運用環境や目的にあわせ最適化することで、その性能を最大限に活かし、緊急時にも迅速に対応できる体制を整えることが可能になります。例えば、特定の機械をサーマルカメラで監視したい場合、その機械の形状や熱特性に適した設置角度や距離の調整が必要になる場合があります。購入後のメンテナンスや故障時の迅速なサポートも、長期的に安心してサーマルカメラを使用する上で欠かせない要素です。これらの点を事前に検討し、準備することで、サーマルカメラは産業関連施設や製造工場での火災対策において有効なツールとして機能するでしょう。
まとめ
サーマルカメラは産業関連施設や製造工場の火災対策において、重要な役割を担っています。これらの設備で発生する可能性のある火災の予兆をいち早く把握することで、リスクを最小限に抑えることが可能です。また、人の目では見えない温度異常を検知し、広範囲にわたる監視を可能にする点でも大きなメリットを提供します。 産業施設や製造工場の安全担当者は、サーマルカメラを活用し火災リスクを効果的に管理することで、施設の安全性を向上させることが可能です。
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